本つげはつげじゃない?
つげ櫛によく焼印されている「本つげ」マーク。
「本つげ」と書いていると「本物のつげ」を表しているように見えます。
しかし、つげ櫛に限っては、「本つげ」マークのつげ櫛は、つげ以外の木で出来ていることがほとんどなのです。
このページではこの「本つげ」表記について、少しご説明したいと思います。
少しややこしいですが・・・
つげはツゲ科ツゲ属の常緑樹です。
もともと「本つげ」という言葉は、つげと、名前に「つげ」とつくけれども「つげ科」ではないモチノキ科の「いぬつげ」や「まめいぬつげ」と区別するために、園芸などの分野でつげを「本つげ」「あさまつげ」とよんだことから出来ました。
しかし、現在日本で「本つげ」という焼印を押されて販売されている「つげ櫛」のほとんどは通称「シャムつげ」という東南アジアに生育するアカネ科の樹木が原料です。
(
公正取引委員会のガイドラインにより現在は原材料の表記に「シャムつげ」という言葉は使わないように指導されています。)
「シャムつげ」はインドシナ半島など東南アジアで生育し、日本のツゲ科のつげよりもはるかに早いスピードで成長します。
櫛材としては向いていて、安価ですが、つげと比べると材質ははるかに柔らかく、またつげほど緻密ではないので粘りがなく、強度の面で劣ります。
また国産のつげより軽く、手触りも異なります。
つげが最高級とされる印鑑の業界では、国産のつげを「本つげ」、アカネ科のものを「シャムつげ」と区別していたのですが、公正取引委員会のガイドラインに従ってシャムつげ表記はされなくなり、現在では原材料「アカネ」と記載されるようになりました。国産の本物のつげを「本つげ」と呼ぶのは、園芸分野での「本つげ」と一致していますね。
しかし、つげ櫛業界では何故か逆で、輸入材のいわゆる「シャムつげ」を「本つげ」と記載して販売していることが多いのです。
老舗のつげ櫛専門店で国産つげの櫛に本来の意味で「本つげ」の焼印を押しているところもわずかにありますが、それ以外の「本つげ」マークのつげ櫛はほぼ100%シャムつげもしくは他の木で作られていると思って間違いありません。
国産のツゲ科ツゲ属のいわゆる「本物のつげ」を使ったものは、「さつまつげ」や「国産のつげ材使用」など産地を記載しています。
老舗の櫛専門店の櫛ですとお店の焼印を押している場合もあります。
何だかややこしいですね(^^;)
さらに「本物のつげ」でも「シャムつげ」でもない木で出来た櫛に「つげくし」と記載して販売しているケースもあるそうです。もはや「つげくし」という言葉は木櫛の総称となりつつあるのかもしれません。